世界のスゴい広告をひたすら見る会 – Cannes Lions Report 2014 聞いてきたメモ

6/28に開催された「世界のスゴい広告をひたすら見る会」に行ってきました。先月6月に開催されたCannes Lionsでの受賞作品を見ながら実際にカンヌへ参加されていた、銀河ライター 河尻亨一さん、キラメキ 石井義樹さん、博報堂 須田和博さん、SIX 灰色ハイジさんがコメントする、ちょいちょい参加者もコメント入れる、というスタイルでした。
受賞したグランプリの中から代表的なものをピックアップして紹介がありました。途中までしかいられなかったのですが、各参加者の方のコメントをメモ。

■The Harvey Nichols – Sorry I Spent It On Myself

 [Grand prix] Promo & Activation、Press、Titanium and Integrated、Film

4つのグランプリをとった、今回のカンヌで代表作といえる作品。イギリスの百貨店で、日本で言えば伊勢丹や三越的な立ち位置。自分にももっとお金をつかいましょうキャンペーン。フィルムでは、自分にお金を使っちゃったので、贈り物にはつまらないものしか買えなかったの、的なシーンを紹介していて、それを受け取ったおばあさんやこどものドキドキ・ワクワクな期待感→「ん?ん??」顔に変わる瞬間がおもしろい映像になっています。
日本でいう粗品のような意味合いでつまようじやヘアゴムなど20品目を商品化し、店頭やネットで販売。つまらないものですがと贈るというヨーロッパ的な冗談のノリ。

【須田さん】
 ・結婚式のひきでものに「つまらいものでシュガー」というのを作った
 ・粗品だけどおもしろいでしょ的な意味合い
 ・昨年までのいい雰囲気のからがらっと変えてきた
 ・今回はXmas映像でいい雰囲気のものはあまり受賞していなかった
 ・競合のJohn Lewisと違う方向性にしたのでは

■Volvo Trucks – Live Tests
 [Grand prix] Film、Cyber

今回のカンヌで2番人気のこちらも代表作。VOLVOのトラックを宣伝するものなのでBtoBなのですが、今回の手法はBtoCtoB、つまり一度コンシューマーにむけて発信して、ウケたものが関係者や家族に伝わってビジネスに戻ってくるという流れ。ティザーの段階から期待感をあおっていたプロジェクト。トラックの高品質を伝えるために、そんなことまで?!というような内容の実証実験を行い、それをドキュメント映像化しています。ひとつひとつすごいのですが、それを6本もやってのけています。
Test6のジャン=クロード・ヴァン・ダムが並走するトラック2台にまたがって足を180度開脚する実験では、このシチュエーションをまねする映像が多数投稿されたようです。
【須田さん】
 ・「使ってもらえる広告」という本の中で「つっこまれクリエイティブ」というものを書いた
 ・Test6のジャン=クロード・ヴァン・ダムのは太陽の入り方、enyaの音楽どれもおもしろい
 ・こうすればバズるという要素をすべておさえている

■Sweetie

オランダのNPOによる児童ポルノ被害への取り締まりのプロジェクト。フィリピンの女の子の3Dモデルを制作し、この子をつかっておとり捜査のようなことを実施し、これにかかった人の身元を突き止めて警察へ通報するところまでを目的にしたプロジェクト。その目的と実施内容と、最後までやりきるところから、審査員の中からもこれがグランプリではという意見もあったが、非営利のものはエントリーできないということから裏の代表作となったようです。
【須田さん】
 ・広告のつもりで作ったものではないはず
 ・広告的な文脈とは違ったロジックで作られている
【河尻さん】
 ・本気で解決しようと実施している、ジャーナリズム+解決というところ
 ・テクノロジーを活用した事例は増えてきている
 

■Sound of Honda – Ayrton Senna 1989 –
 [GrandPrix] Titanium and Integrated
 [GOLD] Film、Cyber、Promo & Activation、Direct、Outdoor
 [Silver] Cyber、Promo & Activation、Direct、Design、Branded Content & Entertainment
 [Bronz] Outdoor、Design

チタニウムのグランプリは刺激的且つ全く新しい次元を切り開く斬新なアイデアに贈られる賞。この部門での受賞は2008年のuniclock以来だそうです。各部門の詳しい説明は公式サイトに説明があります。1989年のF1日本GP予選で、アイルトン・セナがマクラーレン ホンダで記録した鈴鹿サーキットの当時世界最速ラップを音と光を使ったデータビジュアライゼーション~再現したプロジェクト。
【須田さん】
 ・新しいタイプのドキュメンタリー
 ・フィルムも本当によくできていて、実際見るよりも10倍素晴らしく見えるのでは
 ・走行データという埋もれた資産を活用している
 ・通常はアウトプットばかり考えるが、入力→アルゴリズム→出力
 ・入力を探すというところにクリエイティブヒントを探すのが今回の菅野さん流
【石井さん】
 ・カメラワークも素晴らしく、FilmでGOLDを取っている点も評価されるべき

■Anz GayTMS
 [GrandPrix] Outdoor
オーストラリア、シドニーの銀行がゲイ&レズビアンフェスティバルに協賛していて、応援するためにATMをてかてかにデコレーションした「GAY TM」に改造したプロジェクト。でてくる明細もレインボーカラーになっていたり、利用した手数料がドネーションとして寄付されていたりという、見ていてなんだか楽しくなるプロジェクト。ATMのデコレーションっぷりが見ていて派手ですごいです。
【須田さん】
 ・受賞していた代理店の2人もなんだかそういう雰囲気だった?
 

■The Protection Ad – Nivea
 [GrandPrix] Mobile
ブラジルの日焼け止めやUV対策な商品でのプロモーション。Sun Protectionと、こどもを「守る」ということをかけて、夏の海辺でこどもが親の目の届くところから離れてしまわないように守るツールを提供。雑誌に切り離せるリストバンドを配布して、それをこどもの腕に巻いておくことで、指定距離よりも離れた瞬間にアラートを鳴らすことができるアプリを提供。iビーコンによって実現しているテクノロジーを活用した事例。
【須田さん】
 ・使ってもらえる広告
 ・Mobileはキャンペーンものではとりにくい
 ・今まで使われていなかった広告媒体の隙間を見つけることがポイント
 ・隙間の発見+雑誌連動

■Mother Book
 [GrandPrix] Health
新しくつくられた医療・ヘルスケア分野のカンヌ、「ライオンズヘルス」が開催され、初代のグランプリに電通中部の本作品が選ばれたとのこと。Cannes Lionsよりも少し早いタイミングで開催のため、まだ来ている人が少なかったそうですが、本作品の受賞の瞬間、全世界の方から拍手喝采だったそうです。母親、こども、動物というようなテーマはやはり世界共通で感動があるようです。妊娠した女性が、初期段階から出産までの間、赤ちゃんの今の状態を知りつつ、生まれてくる赤ちゃんにむけてメッセージも記入できる本。本のしくみやデザインもとても目を引く作品でした。
【須田さん】
 ・これも使えるクリエイティブ
【河尻さん】
 ・フィルムがよくできていて、感想するフィルムになっている
 ・この映像を見るだけですべて体験したかのような気分になる
【石井さん】
 ・審査ビデオはよくできている
 ・はじめの5秒で心をつかむ映像になっていないと審査員には響かない

■RICE CODE – 青森県田舎館村
 [GOLD] PR
 [Silver] PR
 [Bronz] Branded Content & Entertainment、Media
青森県田舎館村で長年実施されている田んぼアートという田んぼ内に6種類の色の違う稲をそだてて、その濃淡で田んぼに絵を各作品。これを作品を見るだけではなく、その田んぼの絵を画像認識アプリを通すことで、実際のお米も購入できるように購買までつなげたプロジェクト。この会にも参加された博報堂の須田さんが社内の方たちと自主的に立ち上げられたプロジェクトということでした。
【須田さん】
 ・審査ビデオの中の役者もコピーライターさんやPMさん出演で手作り感あるビデオになった
 ・この手作りな感じが、実際の田んぼや田舎の感じともマッチしたのかも
 ・田んぼをメディアにした
【河尻さん】
 ・ネタを見つける力も重要

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