クリエーティブ×テクノロジーが成功するチーム編成の肝になるのか?(ad:techレポート)

■ART & COPY から「クリエーティブ × テクノロジー」へ


1960年代にVolkswagenの事例に代表されるような、アートディレクターとコピーライターがチームを組んで広告を作るやり方が広告における革命だったと語られていて、それはドキュメンタリー映画のART&COPY」の中でもVolkswagenの「Think Small」などの事例で紹介されていました。
 
これが現在ではもう変わっていて、最近の広告では表面上の表現だけではなくユーザーを巻き込んでいくしくみであったり、メディアが複雑に絡み合うしくみであったりというような、クリエーティブだけでは組み立てられない構造になってきています。つまりクリエーティブディレクターとテクニカルディレクターが協力して広告プロモーションを組み立てることが必要になっている。
 
そんな現状の中、クリエーティブ × テクノロジーを実践している方のお話をということで「クリエーティブ x テクノロジー:最新テクノロジーが生み出すイノベイティブコンテンツ」というタイトルで、3人の方から自身の考えや事例紹介がありました。
 
  • 佐藤達郎 多摩美術大学教授(モデレーター)
  • 岩田慎一 ライフネット生命保険株式会社マーケティング部部長代行
  • 野添剛士 博報堂クリエイティブ・ディレクター
  • 菅野薫  株式会社電通クリエーティブ・テクノロジスト


■誰がクリエーティブ × テクノロジーの担い手となるのか?

名前からしてこのセミナーのテーマに合っているクリエーティブ・テクノロジストという肩書きの菅野氏は、以前はコンサル的な部署に在席していたため、現状をヒヤリングしながら今やるべきことを相談して決めていくスタイルを今でも行っているとのこと。担当している業務内容は、広告というよりも商品開発だったりもするということで、従来の発生した仕事を受ける代理店的な働き方ではなく、現状をふまえ今後どうしていくべきかを一緒に考えるパートナーとして関わっているそうです。事例紹介としては、カンヌでもゴールドを取っていたHONDAの「Connecting Lifeline」や、TOKYO FMのしゃべってどんどん学習していく車のパーソナリティ プチェコの「Honda Smile Mission」紹介されました。
 

もともとFlashをつかってアニメーションを作ってみたりする作業も菅野氏自身がされていたとのことで、自身が技術的な知識やスキルを持っていることもありますが、TOKYO FMの事例のようにWebはspfdesign Inc.、ソフトウェアはQosmo、ハードウェアはRhizomatiks、映像はLIFTと、得意分野の際立った会社とコラボレーションしていて、このあたりの仕事のすすめ方にも「クリエーティブ × テクノロジー」のポイントがあると思いました。
 



■クリエーティブ × テクノロジーってどう実現する?

博報堂 クリエイティブ・ディレクター野添氏からはスマートフォン GALAXYのプロモーション「Space Ballon Project」の紹介がありました。このプロジェクトは、スマートフォンを風船に繋げそのGALAXYという商品名のごとく上空3万メートルまで上げて、みんなが投稿していたメッセージがスマートフォンに表示され続ける映像をみんなで同時に見る、というプロジェクト。バスキュールとのブレストの中、商品名からの連想でコアとなるアイデアはすぐに決まったそうです。
広告表現が決まると、それをどう実現していくかというテクノロジー部分を試行錯誤して検証していくという流れになる。Space Ballon Projectの場合は、テスト撮影をしたり、実際に風船を上げて通信ができるか試したりもした。テストでは通信ができなかったりした失敗もあったのだけど、そのテストの映像にクライアントもどんどん乗り気になったそうです。

表現のアイデアを実現できるか技術検証、プロトタイプの制作、テスト実施から作り上げていく流れが、今までにない、クリエーティブ × テクノロジーを実現するのに必要な流れだと感じました。


■クリエイティブ×テクノロジーの効果は?

ライフネット生命 岩田氏から、ライフネット生命×Webクリエイター CONTENTS BATTLE!」の紹介がありました。これはカヤック、クリプトン・フューチャーメディア、はてな、チームラボとライフネット生命が共同で行った企画で、ライフネット生命のバズを起こすことをお題にして制作会社を競わせたプロジェクトでした。Facebookからの一般投票で優勝を決め、最終的にクリプトン・フューチャーメディアが優勝したそうです。この企画意図としては、生命保険を現状でリアルに検討している人にはリスティング広告で十分効果があるが、今はまだ検討していないが、いずれ思い出してもらうために記憶に残すための企画としての実施のようでした。また、テクノロジーをうまく利用したコンテンツには体験できるコンテンツが多いため、ブランドに触れる回数や深度が増すため、将来検討段階で思い出してもらうための何かを残すことができるのでは、という紹介でした。
 



■クリエーティブ × テクノロジーがなぜ必要?

これはやはりアイデアがでたときに、どう実現するかというフィジビリティがすぐ話し合えって結論がだせるというところが大きいようです。また先にもありましたが、現在の広告施策では、表現だけにとどまらず複雑なしくみやメディア間を連携するものが多く、そういったものの理解がないままに全体のフレームを考えることが困難になってきているのだと思いました。また、ここについては、クライアント的にはテクノロジーが無くても売り上げあがればいいよ、という意見もでていました…。



■クリエーティブ × テクノロジーは今後どうなる?

ユーザーには意識されないほど、ごく普通にテクノロジーが広告の中に使われていくだろうということでした。制作側で言えば、コピーライター等と同じように、テクノロジーをベースにクリエイティビティを発揮する働き方をする人が増えていき、当たり前のスキルとして今後必要とされていくだろうという意見がありました。こういった視点をもって部署やチームの編成、採用活動をしていくことが、今後に繋がるのだと感じました。

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アドテック東京