新しいメディアやテクノロジーを取込みつつ常に新しい企画を生み出してきたテレビ表現25年の変化と今後(フジテレビ 福原氏)@はみだし塾 vol.22

ひさびさはみだし塾に通学してきました。今回の講師は株式会社フジテレビジョン、福原伸治氏。自分が小さかった80年代から現在までに作ってこられたテレビ番組企画を事例紹介しつつ、新しいメディアやテクノロジーをどう取り入れていったかを聞きました。20年近く前の番組なのに、今見てもおもしろそうに感じるものもあり、その時代時代に常に新しいものを模索されてきた軌跡がとても刺激的でした。

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■講演テーマ・講師プロフィール

  • 福原伸治氏
    株式会社フジテレビジョン 報道局次長
    プロデューサー
    ディレクター 
  • 日時:10月24日(金)19時~21時
  • 会場:AOI Pro. 大崎本社 大会議室
  • テーマ「テレビと外部 ~過去、現在、未来~」
    テレビがお茶の間の中心だった時代が終わったといわれます。
    はたしてそうなのでしょうか?そうじゃなければこれからどうなるのでしょうか?コンピュータの進化、そしてインターネットの登場は様々なものを劇的に変えてきました。テレビも大きく変わりました。その変化の歴史からなにが読み取れるのでしょうか。そして今後はどうなるのでしょうか。テレビで様々革新的な試みをしてきたフジテレビの福原伸治がこの20年と現在と未来を読み解きます。 
  • 25年のテレビの表現の変化
  • コンピュータとインターネットのテレビへの影響
  • テレビの本質は変わったか?
  • これまでの仕事でも新しいメディアやテクノロジーを導入してきた
  • 新しい表現も新しい人も発掘してきた
  • これまでの仕事の表現を見ながら、テレビの本質への影響~今後の展望を考える

■テレビと外部メディアとの関係
  • 新しいメディア(ゲームやインターネット)との歴史は意外に深い
  • 80年代 メディア環境の変化、デジタル化への助走
  • 1981 レーザーディスク
  • 1982 PC9801発売
  • 1982 CDアルバム発売
  • 1983 ファミコン発売
  • 1985 スーパーマリオ 発売
  • 80年代半ばからテレビ、ラジオ以外のメディアが登場しはじめた

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■1986「TV’s TV」

  • はじめての企画を担当した番組で深夜番組の先駆け
  • テレビ以外にも楽しいブラウン管はいっぱいある
  • ゲームやプロモーション、VTR、CG、環境映像、外国番組、いろんな映像100個を並べた
  • 1987年のYouTubeといえるような新しいテレビの試み

時代背景:1987年10月にJOCX-TV2がはじまった

 

■1990「アインシュタイン」

  • マックのデスクトップをテレビに再現できないかという試み
  • CGをセットとして活用するためカメラにAmigaというPCをセットした
  • 最新科学を発表する番組
  • 本格的なバーチャルセットの到来
  • 現在は絵本作家のメディアアーティスト 岩井俊雄氏にCGを依頼
  • 30分 200万程度の低コストで作っていた
時代背景:他の人と違うこと、いかに変わった番組をつくるかにこだわった

■1992「ウゴウゴルーガ」

  • CGのバーチャルセットを進化させた新しい表現を導入したこども番組
  • 少人数、低予算ノウハウ〜制作のIT化
  • PowerBook 40MBみんなに買ったり、アップルトークで台本共有等
  • 今では当たり前だが、ネットでデータ交換、転送、データ納品など
  • CG低価格化 & 制作現場のIT化
  • リアルタイムな生放送やインタラクティブにも挑戦

■1993「ウゴウゴルーガ2号」

  • 本格的なインタラクティブを導入し、素人の参加を試した
  • 視聴者はテレビに入りたいのか?という疑問も
  • 1:9の法則(表現する人1:鑑賞する人9)やパレードの法則
  • テレビは3メートル、PCは30センチ(スティーブジョブズ)
  • 生放送なのでニュースコーナーも作った
  • こどもが描いた絵をFAXで集め、夕方に板橋区立美術館で展示するメディアアート企画も
  • お絵描きするソフトも岩井俊雄氏に依頼して作った
  • 美術館とテレビを繋げたいわゆるソーシャルメディア
  • 上のシステムをタレントさんにも使ってもらったり
  • アンケート募集を電話を使ったり参加型のコーナーなど双方向性を試した
  • こどもが描いた絵と電話ごしの声で、絵が相撲するコーナー
  • いろいろ試した結果、そんなに参加したくないんだなと思った

■1994「学校では教えてくれないこと」

  • 画面へのコメントフォロー(つっこみ)を導入した
  • 番組の客観視化・2ちゃんねる実況、ニコニコ動画コメントのはしり
  • メディアの共有感覚

 

■1994「シチリアの龍舌蘭」

  • CGつかったドラマ

 

■1998「フライヤーTV」

  • 歌セットにバーチャルセットを本格導入

 

■90年代:インターネットの本格的な普及開始時期

  • 1994 Netscape Navigater1.0 リリース
  • 1995 インターネット元年
  • 1996 fujitv.co.jpもなかった
  • 1996 家庭用DVD登場
  • 1999 iモード開始
  • 1999 2ちゃんねる本格スタート
  • 2000 Googleに本に登場

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■2000「Chanel Mega Show」

  • 恵比寿ガーデンプレイスにランウェイを作った日本シャネルの企画
  • コレクションにちなんだ番組を制作し、ショーの映像やイベントもトータルに担当
  • 当時珍しかった生でのストリーミング配信も
  • ブランディングと企業のメディア化

 

■2000「秘密俱楽部 o-daiba.com」

  • インターネットでできることを考えてやってみた
  • インターネット連動しストリーミングやドラマ配信
  • サイトも同時進行でつくりあげた
  • 美少女の起用:宮崎あおい、栗山千明やベッキー
  • 日本初のオリジナルネット限定配信ドラマも制作し週1更新
  • インターネット博覧会 インパク でのアクセス賞も受賞
  • 出演者が番組内でつくってたサイトを実際に公開
  • オリジナルドラマの配信

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■2005「ガチャガチャポン!」

  • 教育と娯楽の融合
  • シチュエーションコメディ
  • ここにも美少女起用 多部未華子 夏帆

 

■2008「Perfume × 少年タケシ」

  • 週3回更新のWebマガジン「少年タケシ」
  • ネット職人との協業
  • 著作権的には非合法だけど、合法的にYoutubeやニコ動を取り込んでみた
  • クリエイティブの大衆化
  • Perfume「Seventh Heaven」のMVをつくろう企画で作品をあつめた
  • あま絵でおなじみの青木俊直氏の作品
  • 合法的にやるといろんな世界ひろがった
時代背景:2005年12月にYouTube本格的にサービス開始

 

■2008「近未来予報ツギクル」

  • ビッグデータを番組化したいわゆるデータマイニング
  • データマイニングとは、統計学、パターン認識、人工知能等のデータ解析の技法を大量のデータに網羅的に適用することで知識を取り出す技術。(Wikipediaより)
  • 演出にネット的世界観を使用、チャットの疑似空間風に。
  • ブログのキーワードを解析し、次に流行るものとして未来予報した
  • ソネットの研究所と組んだ企画
  • 生放送からストリーミングやオンデマンドの先行実験も行った
  • ワイヤーフレームのCGセット 人が少なくてすむ 如何に安く
  • スカイプのようなものでユーザーと繋ぐ生放送コーナーも
時代背景:2009年にニコ生がサービス開始する前の番組

 

■2009「SOLiVE24」

  • ウェザーニュースとの企画で、24時間の生放送で天気を番組化
  • ネット、BSデジタル、携帯 =トランスメディア
  • テレビのノウハウを活用
  • チャットやソラボタンで双方向コミュニケーション
  • ローコスト&キャスターや社員で運用可能に
  • オウンドメディアの先駆け、企業のメディア化支援
  • 現在もウェザーニュースで運用中

 

■2011「日刊トビダス」

  • ニンテンドー3DS「いつの間にテレビ」向け3D映像コンテンツ
  • テレビとネットのあいだにあるモニタ
  • ユビキタス時代の事例
  • 3D表現の追求
  • ニコ生で生放送も実施した
  • ブレイクするまえのハマカーンも出演
  • ニコ生のコメントはまんざいと相性がよかった
  • みんなで見る感じ
  • コメントオフするととたんに面白さが下がる
  • テレビにもニコ生的な要素加えると新しいものができることがわかった

 

■2009「新・週刊フジテレビ批評」

  • フジテレビのテレビとメディアの関係を扱う自己批評番組
  • ニコニコ動画とフジテレビのコラボ
  • 2010.11.3 小沢一郎民主党元代表 ニコニコ生放送独占会見
  • 2010.11.4 尖閣ビデオ流出事件 YouTubeで  既存メディアの衝撃
  • 2010.12.7 地上波はなし、ニコニコはノーカット生放送
  • 何かあったときにすぐ情報を流すのがテレビ的だったのがネットにとってかわられた事例が増えてきた
  • 東日本大震災でのネットの活用
時代背景:テレビとネットが近づいてきた

 

■テレビと動画メディアの関係

  • ニコ生とは敵対関係だったが新・週刊フジテレビ批評で初のコラボ
  • 2010年11月に第一回
  • NHKもニコ生をサイマル放送
  • フジテレビもニコ生とサイマル放送実施(同時並行放送) →フジテレビ批評での関係から
  • フジテレビとニコ生 協力関係に
  • 地上デジタル放送に移行

 

■外部メディアの30年間

  • 1980年代 アナログ→デジタルへ
  • 1990年代 PCの普及
  • 2000年代 ネットの本格的普及
  • 2010年代 ユビキタス、スマホの普及

 

■テレビ表現の変化はテレビをどう変えたか?

受け手の変化
  • テレビ離れ
  • 自分で情報集める人
  • 時間がない人
  • スマホやタブレットはそれらを加速
  • テレビはネタとして
  • マスゴミ批判
  • ニコニコで作り手受けてが近づく?
作り手の変化
  • ネットへの意識
  • テレビの作り手がネットの小売りに対応できるかという問題
  • 制作費の圧縮に対応できるか
  • 現在のビジネスモデルできるだけ存続させたいという考え方もある
  • 見逃し配信、同時再送信
テレビ局の今後の方向性
  • 積極的融合 ネットを取り込む
  • 消極的融合 外部圧力により
  • 積極的変化 コンテンツファクトリー
  • 消極的変化 人材の流動化
テレビの現状
  • ゆっくり沈んでいく舟ではないかと思う
  • 余力あるうちに体質かえるか、ネットを取り込むなどの案、別の舟に乗り換えるのを並行しておこなう案、できるだけ先延ばしにするなどが必要ではないか 
■とりあえずの結論
  • 2010まではメディア環境の変化やテクノロジーはあまり影響なかったと感じる
  • 今後は無視できなくなるはず
  • 競合や補完しながらの関係「共感」がキーワード
  • 「視聴者」 → 「ユーザー」
  • 作り手、受けてと分けるのではなく、一緒に作る
  • テレビとPCの中間が必要 距離をこえるもの
  • スマホ&タブレットとどう向き合うのか
  • SNSをどううまくとりこんでいくのか
  • 組織形態も中間の解が必要かもしれない
  • CMがあってテレビがあるという関係はある程度つづくがその先は形態が変わって行くかも
  • 本編中にいれこんでいくような形やCMと番組の間のようなもの、いろんな形態にひろがっていく
  • 動画のCMも増えていくが、制作費はかけられなくなっていくだろう
■福原氏の今後
  • 2015年4月 新しいニュースメディアを作る
  • スマホにテレビの報道が乗り出すとどうなるのかをやってみる
  • 地上波のニュースとも一体化し、たぶんおもしろいことができる
  • この25年をフィードバックできるようなことをしたい
  • テレビ局の一次情報とユーザーの情報を組み合わせる
  • 組み合わせて新しいものの化学反応
  • 検証や裏取りのノウハウもテレビ局にはある
  • 組織的にも化学反応を期待している
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