大崎のAOI Proさんで開催のはみだし塾に参加してきました。今回は株式会社ユーザベース 執行役員、NewsPicks 編集長の佐々木紀彦氏。「5年後、メディアは稼げるか」の著者でもある佐々木氏の、これまでのお仕事と、これからのメディアに必要なことについてのセミナーでした。また、佐々木氏がお仕事をご一緒されている東北新社の古田清悟氏、セミナーに聴講にこられていた元テレビ局系シンクタンク代表 氏家夏彦氏も参加された内容盛りだくさんのセミナーでした。自分の勉強用に、セミナー内容をメモしてみました。
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はみだし塾 第24回 佐々木紀彦氏
株式会社ユーザベース 執行役員、NewsPicks 編集長
テーマ「5年後、メディアはどう変わるのか? 」
場所:AOI Pro. 大崎本社 大会議室
日時:2015.03.12 19:00~21:00
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講師自己紹介
- 東洋経済新報社で記者として活躍
- 2年間の休職しスタンフォード大学へ留学
- シリコンバレーのど真ん中、自然の中にある大学
- 留学中は娯楽がなにもなくて3ヶ月であきた
- 修行僧のような朝から晩まで勉強生活
- 人生を変えた恩師は竹中平蔵氏
- 少人数勢のゼミで週に1回3時間の議論の時間を経験できた
- 紙の編集を担当〜本を出版
- 書籍「米国製エリートは本当にすごいのか」 5万部
- 書籍「5年後、メディアは稼げるのか」1万部
- メディアジャーナリストというのが日本にはいない
- アメリカではなりたっている職
- 2008 UZABASE設立
- 2009 SPEEDA launched
- BtoB向け、企業情報プラットフォーム
- 四季報のオンライン・グローバル版
- 人気がでて、500社に導入、経営企画部につかってもらっている
- 2012年に「東洋経済オンライン」編集長就任
■2014 NewsPicks
- よりユーザーをひろめるためBtoCサービス「NewsPicks」立ち上げ
- 話題のニュースや専門的なニュースなどを配信
- ビジネスパーソン必携 、2015年満足度No.1ニュースアプリ
- 36万ダウンロードだがまだまだ小さい
特長1.キュレーションメディア
世界中から記事を集められる
特長2.ソーシャルメディア
気になったニュースをシェア
ニュース版のTwitter
実名でのコメントのため炎上しにくい
コメント一回のみの書き込み制限
有名人のコメンテーター
特長3.編集部オリジナル記事
コンテンツメーカー
コンテンツこそが大事
15名の編集部員
1日10本強の記事
■NewsPicksの強み
- ユーザーがディープである
滞在時間11分
ヘビーユーザーは40分
- 若い読者が多い
25〜34歳 41%
35〜44歳 34%
日経新聞と同じような関係にあるメディア
- オピニオンリーダーに強い
六本木・渋谷スタートアップ
大企業中間管理職
広告メディア系
メディアの構造変化
■100年に一度の変化が同時に進行中
- デジタル
生産、編集、流通の構造が変わる
人力→テクノロジーへの変化
テクノロジービジネスになってきている
★メディア企業はテクノロジー企業になる必要がある
メディア最大の強みは流通部分
新聞がなくならないのは完備された配達網のため
雑誌がへこんでいるのは
利用ユーザーであるひまつぶし層 と 熱狂的なファン層 がある
ひまつぶし層は スマホにとってかわった - ソーシャル
- モバイル
スマホの割合増加
■新しいテクノロジーが生まれるとき、新しいメディアが産まれてきた
- TIME 1922 = カラー印刷
- CBS 1927 = 最初のラジオ局
- VIACOM 1971 = ケーブルテレビ
- BUZZ FeeD = SNS facebookが産まれた時期
★新しいテクノロジーと新しいメディアは一致する傾向がある
■Yahoo!の独占が終わる
- PCでのインターネット時代はプラットフォーマーをYahoo!が独占していた
- スマホシフトの時代
- 通信キャリア、ネット企業、コンテンツ系がそれぞれプラットフォームを持ち出した
- Yahoo!が独占していたプラットフォームが増加
- ドワンゴと角川の事例など、プラットフォームとコンテンツが融合しはじめた
★複数の大きなプレイヤーが乱立する形になるだろう
スマホ時代のコンテンツ作り
- スマホの表示スペースは狭い
- 閲覧時間は短く集中力も散漫
- そんな中でどういうコンテンツ作りが必要か
法則1.文字の長さ
- クォーツカーブ
- 短いコンテンツほど読まれる、また長くてちゃんと深みがあるものも同じくらい読まれる
- 欧文で500〜800文字、日本語で2000〜3000字が特に読まれない
法則2.要約力
- 雑誌 1/10 = 10取材したうちの9割は捨てる徹底的な要約
- PC 10/10 = 安く多く、たれ流しカルチャー
- スマホ 3/10 = 要約+ストーリー性
- ★紙や雑誌を経験してきた人の方がスマホメディア制作に適している
- ★動画においても同様
法則3.ビジュアル
- 活字のパワーがおちて行く
- インフォグラフィックも積極的に取り入れている
- インフォグラフィックエディターという新しい職種を作った
- ビジュアルの持つ価値
- 映像のノウハウの価値
法則4.ソーシャル
法則5.コミュニティ
- ユーザーとニュースを一緒に作るようなケースも
- ZOZOTOWNのニュースに社長がフォロー投稿するような形
- PRO PICKERと呼ばれるコメント書いてもらう専門家
- 自由なだけだとコミュニティが偏ってしまう
- 多様性もつために公式のコメンテーター陣
■東北新社 プロデューサー/ディレクター 古田清悟氏
<事例>レクサスが挑む、世界「高級車戦争」 | LEXUS | 動画 | 東洋経済オンライン
- 極力安く作ったが数百万でも作り方次第で利益化できる
- レクサスからお金をもらっているのにアウディとかフェラーリ等、外国の車がどんどん出てくる
- 日本車が押されているというストーリーの中で、日本代表としてのレクサスはこういう戦略で頑張っているというストーリー
- レクサス色をあまり出さずに作った実験的なコンテンツ
- スマホになるともっと再生時間も短くなる
- 広告っぽくなくつくる映像
- Yahoo!ではどういうものが好まれているかTOP10がすぐわかる
- 例えば「女子高生」、「びっくり」というタイトルがつくとよく見られる 等データが集まってきている
- 次に誰がブレイクするかもデータ解析からわかってくる
- テレビではかりきれないものでも解析することでわかることがある
- Yahoo!Japanにはデータはあるがコンテンツを作れないのでプロダクションの介在する余地がある
- 出てきたデータでクリエイティブつくっていくという流れになる
- これであれば企業にも通しやすく、普通のビジネスの流れ
- 1000人単位のマーケティングして製品開発しているのが普通のビジネス
- クリエイターは作家性と市場性どちらかに振り切る必要がある
- 現在バイラルメディアがさまざまな実験を繰り返している
- 映像を見出しに活用する
1〜2秒でつかめないとスルーされていく
数秒でいかに捕まえるかと、そこからのストーリー展開 - 新しいテクノロジーがでてきたとき、新しい画材を使ってみたいと思わないようだとものづくりには向いていない
- 映像だけ作れても生き残って行けない
- 映像制作の「このジャンルのプロだ!」というのを決めるような今後5年になるのでは
- 売れているCMディレクターやCDもこの専門分野ならあの人、と細分化されていく
- 強い個人であるのかどうかが重要になってくる
- 今のCMはバランスで成り立っていることが多い
- 突出したものがでにくくなっている構造
- 若い世代は同じフィールドじゃないところ目指すのがよいのでは
マネタイズ
- 課金
- ネイティブ広告
- コミュニティ
- 雑誌時代 = 販売+広告
- PC時代 = PV至上主義
広告収入のみのさみしい時代
- スマホ時代 = 課金+広告
バナーはるだけじゃない違った形の新しい広告
PCの時代以上に稼げる可能性がある
■デジタルでどこまで稼げるか?
- 高収益の鍵は課金とネイティブ広告
- バナー広告依存メディアは効率が悪い
- データ:1人あたりの売上高(万円)
huffington 1429万円
itmedia 1600万円
ドワンゴ 3868万円
クックパッド 3985万円
BuzzFeeD 4000万円
Forbes 6872万円
★ネイティブ広告、課金に成功しているかどうかがマネタイズに大きく関与
事例:ニコニコ動画のケース
- 課金ビジネスは最初は赤字
- 損益分岐点をこえると黒字化できる
- プレミアム会員の増加により
- 最初から黒字を目指すのではなく2〜3年耐えられるかどうか
■NETFLIX https://www.netflix.com/
- 映像配信サービス
- 2016年には200カ国へ拡大予定
- 国内外で会員数をのばしている
- 秋には日本にも進出予定
- 動画やCMにかかわる人には大きく影響あるサービス
- 海外で急成長している
- 4K配信などの新しい技術にも積極的
- これからのテレビはどんどんネットに繋がる
- 見たいものがない民放よりもネットで見たいものを見る時代に
- どんどん赤字が減っている
- プラスのサイクルがまわりだす
- 一人勝ちできるようなビジネス
- エンジンがまわりだしている
■ネットフリックスのインパクトについて
元テレビ局系シンクタンク代表
氏家夏彦氏
- ネットフリックスはテレビの終わりのきっかけになる気がする
- テレビの画面を奪いにきている
- ネットフリックスがくるので huluもGyaoも力を入れてテレビを狙ってくる
- テレビ放送を見るのがメインだった今までの習慣
- 動画配信が魅力的になってくると映像配信サービスに乗り換える人も増える
- 2020のテレビ買い替えタイミングと一致する
- 4Kもネットもついてくるとなると視聴者の視聴習慣が一変する可能性がある
- 仮に1〜2割へるとするだけでも相当苦しくなる
- これまでの9年間2割へっていて、ずっと下がっている
- 年度平均視聴率 全部合計する
- 次の5年でもっと下がる可能性
- 岐路が2020の前くらいにくる
- 今からそれに備えて行く必要がある
- テレビだいたいやりつくしちゃった
- テレビだけではおもしろいと思えなくなってきている
- おもしろいことはネットの世界で起きている
- 世の中の流れもそうなっていくのでは
★変革に成功した既存メディアもしくは技術力を身につけたメディア企業にならないとテレビはメディアのフロントラインにいられなくなる
■BuzzFeeD
http://www.buzzfeed.com/
- バイラル系メディアの代表で全世界に1億5000万人の利用者
- facebookでもっとも拡散されているメディア
- バナー広告はうたず、ネイティブ広告が収益源
- 日本でいう記事広告なこと
- 記事とおなじフォーマットで記事に劣らないおもしろいコンテンツ
- コンテンツマーケティング
- アメリカでは元々広告と記事の区分が厳しかった
- 編集記事よりもおもしろいくらい力を入れている
- ネイティブ広告をつくるチームに力をいれている
- メディアの中にもクリエイティブエージェンシーがあるような存在
- クライアントのよさを伝え、誰よりも拡散させることができるチーム
- 7〜8割はFacebookから来ている
- 3/21放送のNHK 放送記念日特集でBuzzFeeDに取材にいっている
■VICE
http://jp.vice.com/
- 一番注目されているスタートアップ
- 5億ドル 利益率34%が今では10億ドル 利益率50%
- VICEの歴史
カナダモントリオールのフリーマガジンとしてスタート
2006 動画サービススタート
2007 チャンネル追加
2013 出資を受ける
2014 VICE news
2015 女性向けサービス開始
- どこにでも突撃取材していく姿勢が受けている
- 北朝鮮にもイスラム国にも取材に行く
- パンクなブランドが受けている
- VICEが パーソナルな深いコンテンツを公開できる場となった
- 作り手は純粋におもしろそうだから 参加してみたいと思う
- VICEっぽくやってください という依頼が来たりする
- 代理店が介在していないクライアント直での
- 3パターンくらいつくって出してみて反応よいものを
- 2ndシリーズを余剰金で作ったりすることも
- これができるクライアントが売れて行くのでは
既存メディアの岐路
- 雑誌は3年、新聞は5年、テレビは7年くらいは現行のビジネスモデルのままでいけるのでは
- 今後重要なのはテクノロジー+人
- 今後最先端のメディアとなるのは、変革に成功した既存メディアか、または技術と編集力かねそなえたニューメディア
- 上の2つが共存していくような感じに
- メディア界のJリーグが開幕するようなイメージ
- メディア人のプロフェッショナル化
- そういった業界、職に変わって行くのではないか